KENSHU SHINTSUBO

Mar

12

谷口吉生さん「雪谷の家」・鈴木京香さん『Casa BRUTUS』創刊300号「一生に一度は見ておくべき名作住宅100」

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『Casa BRUTUS』創刊300号「一生に一度は見ておくべき名作住宅100」にて、建築家・谷口吉生さんのデビュー作「雪谷の家」(1975)を、同建築を管理する鈴木京香さんの案内で撮影しました。

https://casabrutus.com/

 

 

 

 

 

 


 

「雪ヶ谷」の家について

この家が建つ雪ヶ谷は、かつての東京の郊外に私鉄が建設された時、住宅地として開発された場所である。当時、周辺は以前からの木造住宅と建ち始めた新しいコンクリートの共同住宅が混在し、雑然とした景観を呈していた。この様な場所の路地の奥に、住宅を設計するに際して、新しい生活空間を内側に向かって展開するコートハウス形式を採用した。完成した住宅は、表通りからは、路地の奥に小さな玄関だけが見える、その玄関を通り抜け、さらに奥に進むと、床も壁もすべて淡いグレーのタイルを敷き詰めた中庭の空間に出る。中庭の四方の壁の開口部からは隣地の庭の樹木が借景となり、この囲われた場所は庭というよりかむしろ街角の小広場という感じである。その中庭にはこの家の主人の趣味の無線の塔が立っている。家の内部は夫婦の個室、子供部屋、食堂などすべての部屋が居間を中心として、中庭に向かって配置されている。

家の窓から中庭を見ると、同色のタイルで裏表を覆われた立方体が屋根のない居間のように見える。一方、中庭の壁に開けられた開口部を通して内部を見ると、居間は外部空間のようにも見える。視点によって内外の関係を入れ替わらせることにより、次第にその境界は曖昧になり、無限に広がるような空間をこの小住宅の設計に意図した。

谷口吉生(設計者)

 

 

 

「住宅遺産トラスト」ウェブサイトより転載https://hhtrust.jp/hh/yukigaya.html